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十数年前、絵を描きながら生きる1人の若い障害者と出会い、指導したことでアートを介した福祉の世界とのつながりが始まった。

障害者がうみだすアートは、アールブリュットやアウトサイダーアートと呼ばれ、世界中で展覧会が開かれ、国内では行政をはじめNPOや企業など多様な関わりの中、彼らの仕事や社会参加、生きがいを生み出している。

 

そんな中、「福祉」という言葉おの本来の意味や、そこにある思想を、あらためて考えようと広辞苑を引いてみた。1番目に「幸福」とあり、その後に、公的扶助や社会福祉、社会保証といった意味合いの記載が続いていた。さまざまな場面やメディアで取り上げられる「福祉」という言葉には、社会保障政策という意味合いが強く、辞書の最初に「幸福」と記述されていようとは思いもよらぬことだった。

 

昨年の暮れ、福岡県宮若市にある障害者の福祉施設「若宮園」で、福岡出身のシンガー・ソングライター相川理沙さんのコンサートあkがあった。相川さんは、入所する池田福生さん(40)がノートの切れ端に書いた一編の詩に、曲をつけ歌ってくれた。

 

 みーこは外になにしにいくのかな

 おいしものさかしにいくのかな

 チビも外になにしにいくのかな

 あのクロネコ逢いにいったのかな

 すきな時にかえってくる

 気ままな二匹

 マロはなぜ知らない人にほえるのかな

 パセリを守るためかな/パセリはなぜ小屋をとびだすのかな

 マロのためにおやつをさがしにいってるのかな

 お互いを思いやることができる

 しあわせな2匹

『人工島をアートする』

「しあわせが生まれるものに」」

メロディーもさることながら、こんなにもすてきな言葉が生まれる日常に思いを馳せ、日々、施設で暮らす彼らの何げない一つ一つの声を感じ取り、支えるスタッフの方々が彼らと共に紡ぎ出す時に触れた。失敗や悲しみ、寂しさや怒り、痛みや喜び、楽しみを共に感じ、享受、共有できる世界を創出している福祉施設が、辞書の最初の言葉通り「しあわせ」な家に思え、心が温かくなった。そして、あらためて「福祉=しあわせ」という意味合いが胸に染み入った。

 

戦後70年の今、経済成長とともに安全安心で豊かな生活、しあわせを手にしたと思っていた私たちは、現実には、人類の存続に関わる環境、エネルギー問題に憂慮し、家族や共同体の崩壊、貧困、孤独死など、しあわせとはほど遠い事象に右往左往している。「福祉=しあわせ」に未来を学ぶヒントがあると思える。「互いを思いやることができるしあわせ」という言葉が生まれるような私たちでありたい。役所の「福祉課」という看板が「しあわせ課」になれば、すてきだ。

西日本新聞 『文化 批評と表現にて』2001年6月29日

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